迷える仔羊
④
「あ。おはよう、葉月ちゃん。」
くそ…なんでまた…
玄関を開けて1番に東雲を目にして、心の中で舌打ちする。
「…なんでいるの。」
「そりゃあ姫のお迎えをと。」
…誰が姫だコノヤロウ。
はー、とあたしは肩を落として門を閉めた。
「あんたの隣を歩くと、女子の視線がグサグサ突き刺さって嫌なんだけど。」
「仕方ないよね、俺のせいじゃないし。」
…そりゃあ半分間違ってるだろ。
あんた相当なフェロモン撒き散らしてるらしいじゃないか!!
あたしにはわかんないけど、背景に花が咲いてるのは確かだ。
少々睨みをきかせてみるが、あっさりスルーされる。
「毎日一緒にいるところ見れば、みんなそのうち諦めるって。」
「まぁ…そうかもしれないけど…。」
その諦めがあたしたちの目的…
って、ん??
「ちょっと待って…毎日一緒にって…」
「うん、ホントに助かるよ。ありがとう。」
ニッと口角を上げて意地悪く笑う東雲。
ちょっ…ていうか待てコイツ、なんかあたしが嫌な顔するの見て楽しんでないか!?
「なんで毎日あんたなんかと一緒に!?」
「俺、葉月ちゃん気に入ったし?」
…はあぁ???
「何ソレ…?」
「うん、そーいうところとか。」
いやいやいやいや。
全然意味わかんないんだけど。