迷える仔羊


突然足首に何かを感じ、視界がガクンと下がった。

「うあっ!?」

声を上げた瞬間、今度は逆方向に強く引っ張られる。

ボスッ

あたしは訳もわからず必死で何かにしがみついた。



今…何が起こったんだ…?


突然の事に、頭がついていかない。


「葉月ちゃんて、そんなに俺のこと好きだったんだ?」


耳元で低い声が甘く囁く。


…ハイィ!?


びっくりして目を開けると、目の前はベージュのカーディガン。


ええ!?


ガバッと顔を上げて状況を確に…ん…


ぎょえーっ!!?


あたしはしがみついていたモノから素早く飛び退いた。


「葉月ちゃんから抱きしめられるとは思わなかったな」

「ち…ちょっと待て!!断じて違うから!!勘違いするなぁっ!!」

「じゃあそのつれない態度も愛情の裏返し…」

「やめなさい!!ないから!そんなの!!」


学校へ向かう生徒たち、特に女子がジトッとあたしを睨んで行く。


あたしは頭を抱えた。


くそーぅ!!変な噂立つじゃないか!!

ああああ…なんでこんなことに…


考えて、ふと手が止まった。


…あたしそういえば、転びかけたんだよね?


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