迷える仔羊
あの時足首に感じた感触は、つまづいたという感じではなかった。
掴まれて、強く引っ張られたような気がする。
…幽霊?
いやいやいやいや。
一瞬過ぎった冷たい感覚を、ブンブンと振り払う。
東雲ファンのあくどい悪戯か…?
うん、有り得るな。
東雲と繋いでいた手を放してすぐのことだったし。
「手、放さなかったらこうならなかったかもねー」
「わぁ!?な、なに突然!!」
至近距離で話しかけてきて、あたしは思わず一歩引いた。
「放さなかったら、つまづいても支えてあげられたよ?なのに誰かさんは逃げちゃうしね」
「だ、だってさ」
「まぁおかげで葉月ちゃんの愛を感じたけどね」
東雲が甘ったるい声で意地悪く笑う。
かーッ!!
コイツは…!!
「だからあたしはそんなんじゃない!!勝手に変な解釈をするな!!」
「照れない、照れなーい」
「照れてないわーッッ!!!」
不覚だ…!!
素直に転ぶかせめて電柱にしがみつくんだった!!
「…まぁここまで一緒に来てくれたし、ここからは別々でも大丈夫かな」
ふと、遠くを見つめながら東雲が呟いた。
…お?