迷える仔羊
「ならもう別行動でいいってことだね?」
「うん」
よっしゃぁ!解放されたぁ!!
あたしは心の中でガッツポーズした。
「じゃっ!お先…」
「あ、待って」
ん?
「花壇とか茂みにあまり近づかないで」
「え?」
今までに見たことのない真剣な表情で、東雲が忠告する。
「ちょっと、それどういう…」
「じゃあ昼休み、相談室で会おうねー」
あたしの問いを無視して、さっきの表情が嘘のようにニッコリ笑う。
そしてヒラヒラと手を振り、東雲は去って行ってしまった。
「な…なんだったんだ…?」
よくわからないけど、とりあえず言うことをきいておくか。
そう思いながら、あたしも早足で教室へ向かった。
「…なんか痛い」
廊下を歩きながら、あたしは足首に妙な痛みを感じていた。
さっき誰かに引っ張られたところがジンジンと鈍く痛む。
教室に入り席に着くなり、あたしは紺のハイソックスを足首まで下げた。
「ありゃ…」
見ると、三本の赤い筋がクッキリとついていた。
なんだこれ…?
「うっわ、痛そ!」
あ?
突如頭の上から声が降って来て、あたしは顔を上げた。