迷える仔羊
「葉月、その足首どうしたんだ?」
「え?あーいや、今朝ちょっと引っ張られて…」
「ふーん…それにしちゃ凄い跡だな」
うーん…そうなんだよね。
あたしと彼方は二人して、跡のついた足首を覗き込んだ。
あれから十数分は経っているのに、赤い筋はクッキリと残っている。
「少なくとも、人の手形ではないな」
え?
思ってもみなかった考えに、思わずあたしは聞き返した。
「指の跡じゃないの?」
「ああ。この跡の太さは、指にしては細すぎる」
彼方が示した線はせいぜい5ミリ程で、確かに指より細すぎる。
「それにココ見て。この跡は綺麗に足首を3周してるだろ?手で掴んだなら有り得ないはずだ」
てっきり手で掴まれて転びかけたと思っていたが、彼方の検証からするとまるで違う。
…どういうことだ??
人じゃない、だって?
「幽霊じゃ…」
「ないと思うから大丈夫だよ」
言いかけた言葉を遮って、彼方はケラケラ笑った。
「なに、葉月って幽霊信じてるのー?」
「いやっ、なんて言うか…っ」
「へーぇ?」