迷える仔羊
「え?そりゃぁそうよ。東雲くんがあんな子を相手にするわけがないもの、ねぇ?」
ツリ目の彼女が、他の子に同意を求めた。
「ねー。あ、大丈夫だよ東雲くん。ちゃんとあたしたち、わかってるからね」
「東雲くんは優しいから、付き纏われてても、そういう風には考えないんだよね」
「あの子も自分が東雲くんの迷惑だってこと、わからないのかなぁ」
女の子たちはあたしに聞こえていることがわかっているだけに、クスクス笑って言う。
まったく、好き勝手言ってくれるじゃないのよ。
迷惑してるのはこっちだっつーのに!
そう言ってやりたいものだけれど、面倒なイザコザは避けたいのでここはあたしが大人になるとして。
じりじりと我慢しながら、ひたすらレジの順番をあたしは待っていた。
…よし、次の次だ。
デラックスオムそばパンとアップルパイ!!
それだけ買って、さっさとあの集団から離れよう。
「あのね、ユミちゃんたち」
東雲が再び口を開いた。
「それ、間違ってるよ?」
「え?」
女の子たちは声を揃えて問い返した。
ふっと目じりを下げて、彼は言った。
「『彼女が俺に』じゃなくて、『俺が彼女に』付き纏ってるんだ」
そしてそのままあたしの方へ向かってくる。
げ…ちょっと…
なんでこっちに来るのさ!!
いやいやいや。
向かってくる人物に思いきり背を向けるけど、近づいてくる気配は背中でも十分感じられた。
背中に手が触れてあたしはびっくりして跳ねたけれど、そのままごく自然に肩を抱かれた。
「どれ買うの?」
「は」
「ほら、おばちゃんが待ってるよ?」