迷える仔羊
――あたしは生まれつき、火を自在に操れるという特殊な力を持っている。
この世界には、こういう特殊な力を持っている人が少なからずいて、そのうちの1人なのだ。
もちろん力を持たない人たちもいるのだから、普段はみんな力を隠している。
そしてお父さんも、力を持つ者の中でもきわめて特殊な、“力”を操る力、を持っている。
つまり、あたしたち力を持つ者の力を、大きくしたり小さくしたりできるということ。
そのお父さんのせいで、あたしは家でも力を使うことが出来ない。
火は危ないからとかなんとか言って、がっちりシールド張られてるのよ。見えないけど。
もちろん外でも使えないから、あたしに力を使う場所はなかったのだ。
そんな時に、この誰も来ない相談室の取得。
力を自由に使える場所を得たってことだ!!
なんて願ってもない幸運なんだろう。
あたしは気分上々で火を弄ぶ。
創った火の玉を手に握り、パッと開けばカラフルで小さな花火が上がる。
わかんないだろうけど、持ってるのに力が使えないのって結構ストレス溜まるんだよね。
ちなみにこのプチ花火を創るのが、あたしは楽しくて気に入ってるんだ。
「ふあぁ…」
しばらく小さな花火を打ち上げて遊んでいたあたしは、ひとつ大きなあくびを漏らした。
力の容量は体力と比例しており、力を使えばもちろん体力を消耗する。
「久々だったもんなー」
あたしはつぶやいて、ドサッと部屋のソファーに腰を下ろす。
ゴロンと横になり、天井を仰いだ。
「あー…ふかふかだぁ……」
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