神様のかんちがい
「何の香水買うの?」
別にどうでもいい事だったけれど、
悠斗君の機嫌を損ねないために
あたしはワザと聞いた。
「ムーン・ブルー」
目線は商品の方のまま、
静かに答えた。
(どんな臭いがするんだよ?)
"臭い" っていうのは失礼か。
"香り" っていわなければ。
「今つけてるヤツ?」
「そう☆」
(ふーーん)
やっぱ興味がわかない。
香水とか別につけなくてもいいのに。
あたしはどっちかというと
"その人自身" の香りが好きだ。
例えばシャンプーの香りだとか
家の香りとか・・・
「秋本は買わないの?」
ちょっと気になる。
「う~~ん・・・・
俺、そーいうの別にどうでもいいんだ」
秋本はそう言いながらもずっと、
ある香水を見つめたいた。
それは・・・
『オーシャンブリーズ』
「それ、ほしいの?」
自分でも知らないうちに
秋本にたずねていた。
「・・・・」
秋本がビックリした様に
あたしを見つめる。
「オーシャンブリーズの香水・・・」
さっきよりも、もっとビックリ
した様で目を見開いている。
「・・・・」
瞬きをしながらあたしから目を逸らす。
これ以上、あたしも聞かなかった。