神様のかんちがい
☮抱きしめてっ
ソファーに横たわったまんま。
涙さえも乾いてしまった。
残されたあたしはこの部屋の
静けさと冷たさを一人、感じていた。
今、あの人に抱きしめてもらいたい。
あの、笑顔で。
『大丈夫だよ』って。
そんなこと、無理だと思いながらも
ひたすら扉のほうを見つめていた。
今すぐ、抱きしめてっ…
また、だんだんと遠のいて行く
意識の中で、出ないはずの涙が
一つ、ほをつたわった。
誰かが頭を優しく撫でてくれているようだ。
今度は、ほに手を感じる。
ゆっくり目を開けてみた。
「……永沢さん…」
「あき…もと……」
涙を拭ってくれる、あの人がいた。
「ごめんね…
俺が、大城に割引券、あげたから」
「……」
また涙が流れた。
これは、安心してなのか。
それとも、さっきのことを
思い出してなのか。
「…どうして…ここ……」
「ここ、俺の父親が経営しているの」
「…そうなんだ」
「立てる?家までおくるよ」
秋本はそう言って
あたしを起き上がらせた。
秋本は何も言わずに
あたしの肩をもったまんまだ。
「…秋本?」
ギュッ…