神様のかんちがい


よく、ドラマとかである
『近づいたら、こいつの命はないぞ!!』
と同じ状況だ。

あたしは悠斗君の力に全然抵抗出来ない。

「離しててよっ!!!!!」

「俺を好きだって言うまで離さない」

この時、悠斗君の恐ろしさを感じた。

「嫌いだから!!
 悠斗君のこと嫌いだから!!!!!」

「黙れっっ!!!!」

そう言って、またあたしにキスをする。

「やめてっ…ぃや……」

声は出ずに、涙ばかりが溢れる。

その時、脳裏に浮かんだのは
あの人だった。

犬歯を見せて笑うあの人。


『永沢さん!!』

そう言って、あたしの元に
駆け寄ってくれたあの人。

『それじゃぁまたね!!』

そう言って、手を振りながら
帰ったあの人。

『何も言わないで…』

そう言って、静かに力強く
抱きしめてくれたあの人。

『だから謝んないで?
 今は俺がそばにいとくから』
 
そう言って、あたしの手を
ギュッと握ってくれたあの人。

『俺は、永沢が泣いていたのを
 助けただけ…みたいなもんだから!』

そう言って、悲しく笑ったあの人。


『で、名前は?』

自分から人の名前を知りたいと
思った事はこれまで無かった。

なのに・・・




『秋本一樹!!宜しく!!』








< 39 / 50 >

この作品をシェア

pagetop