HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編
それから俺も指名が増え、2ヶ月目には黒服時代の何倍も稼いでいた。
俺は客からの贈り物は大体金に換えた。
早くも、もうすぐ奨学金が払い終わる。
だからあれから樒から連絡が来ない事など特に気にならなかった。
ある日俺は黒服時代の先輩、仁さんに呼び出された。
仁さんにはよく相談に乗ってもらったりと、以前から世話になっていた人物だ。
「透、お前最近調子いいな~! 指名増えてんじゃん」
「仁さん程じゃないですよ。仁さんなんかすでに店のナンバー2だし」
「まぁ、枕やってるしな」
仁さんは笑顔でさらりと言った。
「……まじ、ですか? ソレ、」
「言うなよ? もちろん。……今日はさ、ちょっとした頼みがあって」
吸っていた煙草を灰皿に押し付けながら仁さんが見せたのは、見た事の無い茶色いパッケージの煙草だった。
銘柄は『HEMLOCK』
「実家が煙草屋で、コレ新商品でさ。アピってくれって頼まれたんだよ。もう店には話付けてるし、何人かには頼んでんだ」
「いいですけど。とりあえずお客さんに見せて勧めるってカンジですか?」