HEMLOCK‐ヘムロック‐番外編
 ルナはキャバクラの仕事の為、11時には店を出た。しかし樒は


「まだ居たいな~」


 なんて言って、結局最後まで店に居たのだ。

 俺は他に指名客もいないので、ずっと樒のテーブルに着いていた。


「キミちゃんて今日初めてホストクラブ来たんだよね?」

「“キミ”って呼び捨てでいいよ! ……初めてだけど? 遊び慣れて見える?」

「遊び慣れってゆーか……、初めて来たのに、こんなにボトル入れたコ初めてだったから、すげーって思って」


 樒の金の使い方は正直、ハンパなかった。

 何か記念日やイベントでも無いのに、初見の客がドンペリのブラックやゴールドを入れている。
これで初めてだと言うなら誰だって疑いたくなるだろう。


「だって、ここ、ホストクラブでしょ? こういう所ってお金落とせば落とすだけ優遇されるんでしょ?
私、単に今、誰よりも優遇されたい気分なの」


 それはハタチそこそこの女の子が吐いた台詞とは思えなかった。


「でも、ここまでしなくても……、俺の接客、不満だった?」



「……昴って、ホストっぽくないね。普通、ホストってもっとお金使わせようとするもんだと思った」


 樒のこの言動に俺は微かな怒りを覚えた。
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