to:あなた from:私
『暇なら俺とメールしようぜ』
メール本文には名前とその短い一言だけ。
普段ならこれだけか、と思う内容のそのメールはやけに私の心に響いて、指は返信を打っていた。
「先生来たら教えてね」
「おっけー」
友達の亜依にそう言って、指を動かす。
空き教室の静かな空間にカチカチというメールを打つ音だけが響いていた。
『大歓迎、俺今学校なんだけどそっちは?』
携帯を閉じる。
今までの相手は返信に一時間、早くても三十分かかってたからきっとこの人もそうなんだろうな、と思った。
「今日ってもう授業ないっけ?」
「うん、ななみん暇?ゲーセン行こうや」
「あー…うん暇、行く」
財布の中身を確認しようとして、携帯が震えているのを感じた。
さっき送ってから五分どころか、三分も経っていない。
…早い。
なおも話しかけてくる亜依を止めて、携帯を取り出した。
《煉》
ついさっき登録した名前。
本当にこんな早くに返信してきたんだ。
即返信がモットーの私は、やけに嬉しくなってまた携帯を開いた。
横から亜依が覗き込んできているのも気にならなかった。