to:あなた from:私
『大学生は自分で授業組めるんだよ』
言外に今日は休み、と言っているのだろう。こんな文面は好きだ。
にやにやしている私を訝しんでか、亜依はやけに教室の外と私を交互に見ている。
手早く返信を打った。
『大学生いいな、俺高校生だもん』
基本的に私は性別を変えるだけで年齢や職業は変えない。
その方がリアルなメールが出来て楽しいから。
「ななみんまだー?」
「んー、まだ時間あるっしょ?
もうちょい待って!」
「仕方ないなー」
「ありがとーっ!」
苦笑しながらも付き合ってくれる亜依に抱きついた。
スキンシップ好きな私は仲良くなった子に抱きつく、という癖がある。
細い亜依はジャストフィットするのだ。
「さっきから誰とメールしてんの?」
「……友達?」
「何今の間は」
「いやいや」
「いやいやいや」
下らない言葉の応酬が楽しい。
頭の回転が早い亜依は私の言葉に即座に返事をしてくれるから、不自然なところで会話が途切れる事もない。
携帯依存の私でも現実でのコミュニケーションは無くてはならない大切なもの。
その筆頭が友達とのおしゃべりなのだ。
メールとはまた違って、面白い。
でもやっぱりバイブが鳴るとそっちに意識が向いてしまう悲しさ。もはや条件反射。
会話そっちのけでメールを真剣に返す私に呆れるでもなく、亜依は立ち上がって背後に回り込んだ。きっと髪の毛を弄りたいんだろう。
肩より下まである私の髪はくせっ毛でコシがない。そんな髪を弄るのが好きだという変わり者の亜依はうまくその髪をまとめてみつあみにしてくれる。
眼鏡をかけている私はさながら学級委員長―……なんてお手軽な気分に浸ってみたりするのは、私も好きだ。