不協和音
「沙也!なあ、5月5日って沙也の誕生日だろう?」
「あ、うん、そうだよ。よ、よく知ってたね」
「ま、まあな・・・。だから、その、その日に遊ばないかな・・・って」
思わず、ぽかんと間抜けな顔になってしまう。そして、一瞬置いて、赤面してしまう。顔が熱い。心臓が、ドクドクいっている。動悸が激しい。
嬉しすぎる。前は心配してくれて、今は私の誕生日を覚えていてくれて。その上、その日に遊ぼうって誘ってくれて!これ以上、幸せなことはない。
「本当に!?」
「あ、ああ。そんなに嬉しいのか?」
「う、うん!だって・・・」
だって、好きな人から誘われたから。
言いたかったけど、言えなかった。繋がる筈だった言葉は、行き所をなくして私の中へ消えていった。小さく息を吐いて、自分を冷静にする。
そこで、固まる。
そう言えば、その日は先客が居た。他にもない、田中さん。
どうしよう、私は直樹君と遊びたい。だけど、折角田中さんが誘ってくれて・・・。それに、先客でもあるのに。ドタキャンするのは、申し訳ない。