不協和音
「あ、でも・・・。その、その日・・・先客が居て・・・」
「そ、そっか!じゃあ、他の日にするか?俺はいつでも良いけど」
「あ・・・・・・」
あからさまにテンションが下がっているが、仕方が無い。というか、気にしている暇などなかった。
折角、誘ってくれたのに。折角、初めて直樹君と出かけられたのに。
好きな人と過ごす誕生日となったのに。
少し俯いた私の頭を、直樹君が軽く叩く。直樹君は、優しい。こうやって、人に対して気配りが出来る。
落ち込みながらも、直樹君が触れているということにドキドキしている。なんて現金な女なんだろうか。
「・・・まあ、その・・・。沙也さえ良ければ、先客の後からでも・・・」
「え・・・?」
「だから、その・・・。5日の何時からでも良いから遊ばないか、って訊いてるんだよっ」
同じことを2回言わされたからか、羞恥で頬を少し紅くする直樹君。語尾が少し乱暴になっているが、それは彼なりの照れ隠しで。それが分かった私は、思わず笑ってしまう。