不協和音


「えと、その・・・遅刻してすみません」
「おっと・・・。ああ、大丈夫だよ。遅刻っていっても、たかだか5分だし」

これ以上は耐え切れなくて、ばっと姿勢を正すと、田中さんもつられて姿勢を正した。そして、笑顔を見せてくれる。
そして、優しく頭を撫でてくれた。それが何故か、直樹君と被った。でも、直樹君とまた違う優しさと、その大きな手で、ドキドキしていた。これは多分、田中さんが眉目秀麗だからだ。そうに違いない。それ以外、有りえない。
もしかしたら田中さんは、ジャニーズ系という人の類いなんじゃないだろうかと、ふわふわと別のことを考えた。

「それにしても、制服とは違った可愛さがあるねえ・・・」
「か、可愛くないです。・・・田中さんは、なんか、黒!って感じですね」
「そこは『格好良いです!惚れちゃいますよう!』とか言って欲しかったなあ」
「言いません!」

ヘラヘラと笑いながら、軽口をたたく田中さんを、軽く睨む。それでも終始笑顔だから、もう放っておいた。いちいち突っ込むのは、面倒くさい。

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