不協和音
田中さんに彼女がいない・・・?
思わず、ぽかんとして口を開けて間抜けな顔になってしまう。いや、仕方が無いと思う。だって、こんなに眉目秀麗な田中さんに言い寄ってこない女などいないと思う。そして、そんなモテ男は女遊びとかしているんだと思う。だから、田中さんに彼女がいないなんて、信じられなかった。
「嘘・・・じゃないですよね?最近別れたとか、そんな感じですか?」
「違う、違ーう。今まで出来たことなんてないよ。・・・あ、1人いるか。でも、そいつとはお互いに遊びで付き合ってただけだから」
それでも、1人付き合っていたってことだよね。・・・というか、お互いに遊びって何なんだ。どんな間柄だよ。しかし、なんで田中さんはそういうことを私に教えてくれるんだろうか。・・・信頼されてるってこと?いや、これは違うか。じゃあ、仲が良くなったってこと?
・・・そういえば、私と田中さんってどんな関係なんだろうか。
「そうなんですか。意外です」
「意外って・・・。もしかして、遊んでるイメージがあったの?」
「はい、その通りです」
「・・・そこは否定しようよ。まあ、よく言われるから別にいいけど」
ふう、と息を漏らしながら肩をすくめて、よくそうやって逆ナンされるんだあ、と苦笑する田中さん。まあ、可愛いから良いんだけど、とすぐ笑顔に戻る。
そのとき胸がチクリとしたのは、気付かないふりをした。