不協和音
名乗られてしまったなら、仕方が無い。こちらも名乗らなければいけない。それが常識だから。
無表情で言ってしまったのか、青年は苦笑しながら「そんな無表情で言わなくても」と溜息交じりで言う。でも、そんな初対面の相手にニコニコしろと言われても困る。だって、そんなの無理だ。無理無理。
「ま、良いや。俺のことは広樹って呼んでよ」
「はぁ・・・。考えておきます」
何で貴方は、そんなに笑顔なんですか。アオキを片手に笑顔の好青年ってか。
・・・それから田中さんは、度々私の前に現れるようになった。それは別に良いが、段々ウザくなってくるのは何故だろう。でも、まだ1週間に1回か2回だから、まだ良いとする。これ以上増えたら、正直困る。ああ、あのウザさがなかったら別だけど。
田中さんは、ウザい上に、胡散臭い。だから困る。相手にするの面倒だし。女の視線も面倒だし。