不協和音


「俺の働きっぷりが、やっと店長に認められたよ」
「そうなんですか?」
「ああ。だから、これからは会いに行くのを、週1じゃなくて、週3にするよ」

だから、思ったそばから何でこれなんだ。そして、また登校中の朝。2日連続でおかしいな、って思ってたけど、これはない。朝から気分が下がる。どんよりした気持ちにさせないでよ、田中さん。
というか、じゃあこれからは週3回、月に約15回も会ってしまうことになる。つまり、15回憂鬱な気分に悩まされなければいけないのだ。まったくもって不愉快だ!

「あ、会いに来なくていいですよ!」
「え、何、照れてるの?やっとデレてくれたかあ」
「照れてないし、デレてません!私は唯、田中さんに朝から会いたくないだけです!」

あ、しまった。幾らなんでも、はっきりと言いすぎてしまったか。会いたくない、だなんて、傷つけてしまっただろう。言ってから、後悔。田中さんが、いくらウザくて、神経が図太くて、胡散臭くても、これは傷ついただろうから。
ばつが悪そうに、軽く顔を歪めると、田中さんはくしゃっと頭を撫でて、言う。
笑顔で、私に言う。

「じゃあ、夜にでも会う?」

ああ、この人は本当に、突拍子もないことを言う人だ。人がこんなにも、心配していたのに。
それでも、この人が傷ついていないことに安堵してしまう自分が居た。

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