不協和音


「・・・沙也さあ、最近なんか楽しそうじゃねえか?」

朝、学校に着いてから教室に入り、直樹君におはよう、と言って。すると、直樹君は返事をするでもなく、開口一番にそう言った。
私は、思い当たる節もなかったから、こてんと首をかしげてみせる。うーん、楽しいことなんて、ない。唯、前と変わったのは、週3回田中さんと会うことになったこと。結局、今まで通り、私の登校中に一緒に歩きながら話そうということになった。
だからといって、これが楽しいかと訊かれると、困る。得に何もなく、いつも通り、何も変わらない朝。田中さんと他愛無い話をして、軽口をたたきあって、終わる。それだけだから。

「・・・そうかなあ」

小さく声を漏らすと、直樹君が眉間に皺を寄せて、何かを考えるようにしていた。それから、「ま、いいや」と爽やかな笑顔を見せる。
私は、やっぱり直樹君の爽やかな笑顔が好きだなあ、と思った。

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