ダンデライオン


目的地に着き、扉の前で静かに息を整えてから、軽くノックをする。すると、中から女性というより、まだ幼さが残る少女の声が聞こえた。まあ、人間は声と顔は違うこともあるから、人物が少女のような姿をしているのかは分からない。
とにかく、ここで色んなことを考えている暇はない。「失礼します」と言ってから中に入る。

「遅れて失礼致しました」
「いえ、待っていないので、大丈夫です!」
「いえ・・・、女性を待たせるなど、あってはならないことなので」

執事として、紳士的に立ち振る舞う。執事になって、10年。つまり、執事になったばかりのときから、この家に仕えているというわけだ。
目の前の少女は、やはりまだ幼さの残る少女であった。笑顔で「大丈夫です!」と元気よく言う姿は、微笑ましい。
面接などではないが、話をしたり、説明をした。その間、この少女がどんな人間なのかを観察して、見極めようとしている自分が居て、少し苦笑してしまった。

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