MATO
「…今じゃダメ?あたし部活あるし」
何より、後藤と帰る予定がある。
「今じゃダメなの、佐藤さんが部活終わるの待ってるから」
湯川さんが言おうとしていることなんか分かっている。
だけどそんなことのために後藤と一緒にいる時間が減ると思うとすごく嫌な気持ちになった。
だから、おとなしくしてたけど少し反発してやろうと思った。
「後藤と帰るから、後藤がいてもいいならいいよ」
一瞬にして湯川さんの顔が歪む。
ここまで歪むものかと少しびっくりしたけど、あたしだって引くわけにもいかない。
「な、なら邪魔しちゃダメだよね。また明日話すよ」
引き攣りながらも笑顔を絶やさない湯川さんをすごいと思った。
湯川さんのグループの子たちはずっと睨んでいたけど。
「うん、また時間がある時にでも話して」
そう言った時に調度、教科担当の教師が教室に入ってきたからあたしは黒板に体を向けた。
携帯のバイブレーターが鳴った。教師にバレないように携帯を開き、メールボックスを確認するとマリナだった。