MATO

昼休みももうすぐ終わる時間になって、後藤と矢藤くんは自分の教室に帰った。
あたしとマリナは次の授業の準備のために自席に戻る。


少し、嫌な予感はしていた。
もし何かがあるならこの時かな、とは思っていた。
嫌な予感ってものは当たるものだ。

朝から湯川さんグループはイヤなくらいニヤニヤしてあたしを見てくるし、クスクス笑いも聞こえてくる。
嫌な予感だけじゃなく気分も悪かった。




「ねぇ、佐藤さん」

机の中から数学の教科書とノートを取り出す。そして携帯を開いてウェブページを開いてマリナがやっているホムペに飛んで投稿されたリアルを読む。

もちろん湯川さんのあたしを呼ぶ声は聞こえていた。
だけど絶対いいことじゃないし聞かない方がいいって事は恋愛経験値の低いあたしでもわかる。
聞こえなかったフリで済めば安いもの。

そのまま話しかけるのを諦めてほしい。そんな淡い期待を込めてリアルを読み続けた。


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