両手でも足りない
均等に切り分けられたパウンドケーキを、早速トモくんは一切れ手掴みし頬張った。


「んっ!ウマい」

頬を綻ばしてモグモグと口を動かしながら、ほい。と、あたしに一切れ乗せられたお皿を差し出す。


「…男の子みんながトモくんみたいだったら、簡単なのになあ」

嬉しそうに食べている横顔を見つめたまま、あたしは無意識にそう言葉にしてしまったみたいで。


「ん?どうした?」

心配そうなトモくんの顔がドアップに映る。


顔を覗きこまれて、その時初めて声に出ちゃったんだって気づいたあたしは、思わず目を見開いて首を横に振る。

「ううん、なんでもないよ!」

「なんでもないようには見えないけど?」

「ほんとだってばー」

不思議そうな顔をするトモくんに、あたしは顔の前で両手を左右に動かす。ジタバタするあたしの顔を凝視していたトモくんは、不意に口角を持ち上げた。


「海斗だろ?」

そう一言投げかけて、ニヤッと笑う。
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