両手でも足りない
「アイツ、…愛想悪過ぎなんだもん。顔合わせればチビとかバカとかそればっか。そりゃあ、確かにチビだしバカだけどっ!すごい意地悪なの」

体育座りをして膝を抱え込むあたしを、にやけ顔をするトモくんと視線が合わさる。


「べ、別にっ、好きとかじゃなくて。なんだか最近特に、なんていうか…」

すかさず口を挟む。たじろいだあたしを更に面白そうに覗く瞳から目を逸らす。


さすがに“好きとかじゃなくて”はまずかったかもしれない。これじゃ、好きだと言っているようなものだ。

口を閉ざしたあたしに。トモくんの意地悪な一言と同時に、いやらしく口角が上がる。

「要は好きなんだ、海斗を?」

「うー…、わかんない」

抱えた両膝に顔を埋め、捻るように首を左右に振った。


そして、

「これだけ気になるってことは、…好き。なのかもしれない、けど、わかんない…。前みたいに一緒に遊んだりできなくなったのが、なんていうか…。名前で呼んでくれないし。チビだし」

情けなく弱々しい声で答えたあたしは、まだ膝を抱えたまま。
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