両手でも足りない
『それは照れ隠しだろ。好きな子をついイジメたくなるっていう感覚と同じで、言葉は悪くともちょっかい出してくんのは、気になる証拠』


…照れ隠し?

どこが?確実に迷惑って顔されてるのに。話も聞いてくれないし。

だから、どうにもできないんじゃない。


8段跳び終えた海斗は清々しい表情で列に並ぼうとしていた。

擦れ違い様に意地悪そうに目を細めて。

「チビなのに7段跳べんの?一生無理だな」

と、大胆な嫌味が炸裂した。


そう、海斗から話しかけてくる時はいつもこんな調子なんだから。


「な、なっ…、何よ!ちょっと運動できるからって。デカけりゃいいってもんじゃないんだから」

いーっと、重ねた歯を見せてやった。


「ちょ、青海っ。次あんただよ」

何してんの、落ち着きなよ。と、興奮するあたしの後ろで、順番を待つ友達が背中を突く。


バカにしたように鼻で笑った海斗は、澄ました顔で列の後ろへ並ぶ。


何よ…、バカにしてくれちゃって。

7段くらい軽く跳べるわよ。自分は8段跳べるからって、チビだから跳べないとかないんだから。
< 18 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop