両手でも足りない
脳内イメージでは、華麗に跳び越えピシャリとマットに着地。

する予定。


だったのに…。


「もっと跳んで、手はここっ!」

言い聞かせるかのように、台をバンバンと両手で叩く体育の先生は、「はいっ、次!岩佐さん邪魔よ」と、笛を吹いた。先生にまで邪魔扱いされた。


体育が苦手なあたしが、華麗に跳び箱7段を跳べるわけがなくて。6段だって跳べるのか微妙なのに。

跳べなかったからってチビは関係ないと思う。あたしの運動神経の問題。


やっぱりな。

とでも言わんばかりの得意げな顔をする海斗と目が合う。


あたしは何を隠そう、男子との合同体育が一番嫌いだった。


「ほらみろ、チビだから跳べないだろ。跳べるわけがない」

とは言って来ないが、そう罵られているみたいな視線に耐え兼ねて、目を逸らし足早に列の後ろへ駆けて行く。
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