両手でも足りない
アイツより早く駅に着いたあたし。

そう先回り、海斗より先に。


ほぼ毎日、アイツはどこへ行くのか。それを確かめるため。

確かめてどうするかなんて決めてないし、知ってどうするかなんてもちろん、決まってない。

けど、知りたいんだ。


ただそれだけ。

それだけじゃ理由にならないかな。

聞いても教えてくれない。どんなに問い詰めたって、あんな迷惑顔されたって。

どうしても知りたいんだもん。気になるんだもん…。


歩行者通路と腕時計を交互に見ること20分。

家から駅までは15分。

そろそろ現れる頃。


そう思って息を吸い込んだ時。


「青海?…何してんだ?」

背後から突然呼ばれた声に、肩が上がった。


バクバク心音が暴れている中ゆっくりと振り返ると、あどけない顔で見下ろしているトモくんが立っていた。
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