両手でも足りない
「なんだー、トモくんかぁ…。びっくりさないでよー」

がっくりと肩を落とし、胸を撫で下ろす。


名前を呼ばれた時、海斗を張っていたのがばれたんじゃなんて思った。

まだ冷たい空気が全身を貫く中、一気に体温が上がる。


「びっくりさせたつもりはないんだけど、何してんだ?」

「んー、ちょっと…」

「なんだよ?言えないようなことでもするのか?」

あたしの返事に目をひんむかせて、声のトーンが上がったトモくんはあたしの隣に近づく。


まぁ…、確かに…。

人には大きい声じゃ言えないことだ。


「変なことする前にまず俺に言ってみ?」

と、なぜかトモくんは必死にあたしの肩を掴み離さない。


明らかにいらぬ誤解が生じているのは、そのなんとも言い難い形相で理解できる。


「いやー、そうじゃなくて!トモくんが思ってるような…」
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