両手でも足りない
そう言いかけた時。

まさにあたしがここにいる目的、つまりターゲットが出現したのだ。


ゴクリ。

全身の毛穴が開いたような感覚に、生唾を飲み込む。


このままではバレバレだ。辺りを見渡して隠れられそうな場所を見つける。

掴まれた肩を振りほどき、すかさず駐車されているトラックの陰へと身を潜める。

この時ばかりはさすがのあたしも迅速で、これが何故体育の授業に活かされないのか疑問に思う。


そんなあたしの不審な行動に、一緒にいたトモくんは益々怪訝そうに顔を険しくさせている。

だけど、今のあたしにはトモくんに説明なんてしてる暇はないの。


「青海?」

「しーっ!」

人差し指を立て唇へと押し当てたあたしは、さも静かにしろと言わんばかり。


トモくんは腑に落ちないような顔をしながらも、あたしが捕らえたターゲットへの視線を追う。
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