両手でも足りない
「いやいやっ、青海！待てって、一体なんだよ？」

相当焦っているようなトモくんの声を後ろから受け、それでも足のスピードを緩めないあたしに対して、ひたすら声を上げていた。


そんなの気にせず切符を２枚購入し、そのままの状態でトモくんを引きずり改札を抜ける。

素早く階段を駆け上がり、海斗の姿があるホームへと下りる。

アイツはこちらをチラチラ気にしていて、電車が来るのを待ち侘びている様子。

遠目ではわからないくらいの距離を保ち、電車が来る方向とは全く真逆を向いて。


海斗がどこまで行くのかはわからない。

多分隣の街。あくまで予想。


わかっているのは、毎日夕方どこかへ出かけていくこと。それが、デートかもしれなくて。

そして、かわいい女の子と一緒にいたっていう情報だけ。


あたしはただ海斗のことが、無償に知りたかっただけだ。
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