両手でも足りない
鉄階段を前に、あたしとトモくんは背後から上がった声に顔を見合せた。

そして、後ろを振り返る余裕もなく目を見開いたまま。


「こんなとこで二人して、コソコソと何してんだよ?」

と、“コソコソと”を強調したその低い声は声変わりしたからとか、そんなんじゃなく。


あたしたちの行動を見透かしたのか、それとも怒りなのか、はたまた呆れているのかもしれない。


バカみたいに頭をポリポリとかき、トモくんが振り返る。

「ああ~、海斗久しぶりだな~。家が隣の隣なのに全然会わないなあ~」

白々しく間の抜けた声が棒読みで、ほんとにバカみたいだった。


それをそのまま返すかのようにバカにした声を出したのは、紛れもなく後ろにいるアイツで。


「はあ?」


それは当然だ。そう思った。

そして絶対、海斗の眉が歪んでいる。そう思わずにはいられない。


「人のあと着いてきて、何をしてんのかって聞いてんの、俺は」
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