両手でも足りない
あたしも海斗に続いて堤防に上り、あとをついて行く。


「…なんで来なくなっちゃたんだろうね」

やっぱりあたしの問いかけには返事はなく、どんどん進んで行って防波堤と交差するところで海斗の足が止まった、


来なくなった理由。

あたしにはわかっていた。

中学に上がって、明らかに海斗があたしと一緒にいるのを嫌がった。


なのに。


「お前のせい」

波の音にかき消されそうなくらいの海斗の声が耳に届く。


「…あたし、のせい?」

そんなわけない。


記憶のどこをどう辿っても、あたしのせいとは考えられなかった。


「そ。青海のせい」

久しぶりに呼ばれた名前。


寒いはずなのに体中が熱くなって、目頭までもがじわじわ熱くなる。



『ガキじゃないんだし、もう俺につきまとんなよ』

中学1年生の春。確かにそう言って、あたしを突き放したのは海斗だった。
< 61 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop