Dear
「あんなボロボロの洋服着た奴、なんにもできないよ〜」
確かに見た目はただのコジキのようだった。
だけど……
あの瞳は……
ただなコジキには見えない。
「……いぃ」
「ん?」
「いいから!行こう!?」
無理矢理引っ張りお店に連れ込む。
あの瞳を思い出さないように。
あの、
全てを見抜くような瞳を思い出さないように。
店はきらびやかに飾りつけられている。
高級な酒が次々に開けられていた。
「僕らも呑もうか」
「はい♪」
酒を美味いと思った事はなかった。
吐き気を抑えているのがやっとだ。
その日もそんな感じで。
べつに変わった事とかあったわけでもなく。
ただ、少し寝不足で体力が低下していたのもあったわけで
本当に吐きそうだった。
「あの…あたし……少し外の空気吸ってきます…」
うちの店では
吐く奴も珍しいわけではなかったので
吐きそうな奴は外に行くのがルールみたいなもんだった。
「はぁい!」
富沢は返事をして違う子といちゃつく。
ま、んなことどうでもいいんだけど。