Dear



建物から離れたところで屈み込んでいると声をかけられた。



「おい。」


「?」




とりあえず振り向く。




そこであたしは言葉を失った。




「っふ、マヌケ面……」


「なっ!!!」






そこにいたのは




さっきの男。



「何の用…?」


慎重に言葉を選ぶ


面倒事にはできれば関わりたくない。



「いや………さっき、ぶつかったから謝ろうかなぁ〜と思って?」
「なんであんたが疑問形なのよ。」



そんなことであたしに会いに来たのかと半分呆れながら言う。


だってそこは疑問形ではないよね。
普通に謝るとこだよね。


「お前さ、外の世界って行った事ある?」



ニコリと笑いながら聞いて来るそいつ。



「外………?」


「外」ってのは多分、あいつらの帰る場所の事だろう。

あたしなんかとは掛け離れた世界…。

綺麗でこんな汚い人達もいなくて自由で…。



「ないけど。だから何。もういっていい?」


胸が苦しくなる。


希望の光がちらつくから。



やめて欲しい。



逃げたくなる。




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