真夜中のカラス達へ
「もしもし、兄様?」
「もしもし、千世か、どうかしたのか?」
千世、泰樹の二つ下の妹である。
「また、帰ってこないのですね…」
―おかしい…。いつもなら落ち込んだ声なのに…?
「あぁ…すまん。」
「うん、だから私ね、決めました!では、後ほど!」
千世の声が明らかにテンションが高かった。
>ツー
「…後ほど?」
―後ほどってなんだ?よく考えろ…。

>トントン。
部屋の扉をノックする音がした。

「!んっ、誰だ?…まさか、な。」
直感で泰樹は、嫌な予感がした。

扉を開けるとそこには、千世がいた。

彼が知る五年前の妹とは、まったく違っていた。

長くなった綺麗な黒髪を二つに結び、雪のように白い肌、ピンク色の着物を着た美しい少女が立っていた。


「うーーーーーーーー兄様!!」
千世は、いきなり待機に抱きついた。

「ちっ、千世?」

いつもは、無表情な彼の頬が赤くなった。

「えっと、泰樹兄様、お久しぶりです。本日からこの寮にお世話になります。」

「へっ?」

>ニコニコ笑う妹と茫然とする兄がそこにはいた。
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