忘れ物。
だけどレイは、その笑顔を崩す事なく返事を返してくれる。
「舞子待ってる。」
「何で?」
「うん。今から用事があってね。」
私は「ふーん。」と小さく頷きながら言った。
レイは制服から着替えていた。
最近レイは、うちには遊びに来ないから、制服姿しか見なかった。
だから今日のレイの私服に、また少し『かっこいいな』が積もった。

「ごめん。お待たせー。」
舞子は慌てながら玄関から出てきた。
今日の舞子はいつもよりおしゃれ。
あの黒いチェックのワンピースには、見覚えがない。
昨日買い物に行っていたから、買って来たのだろう。

「行ってらっしゃい。」
私は小さく手を振った。
「うん。今日お母さんは夜勤らしい。だから適当にご飯食べてて。」
「舞子、夜ご飯食べてくるの?」
「うん。ごめんね。じゃあバイバーイ。」
舞子はレイの手を引っ張って、大急ぎで走っていった。
レイは走りながら私の方を振り向き、大きく手を振ってくれた。

そのレイの姿には、大きな優しさが映し出されていた。

あんなレイと、いつも一緒にいれる舞子、うらやましいな・・・って、いつも思う。
あの二人凄く仲が良いみたいだし、もしかしたら付き合ってしまう可能性も高かったりする。
だから、舞子には少しヤキモチを焼く事もある。


「ただいまー。」
誰もいない家に声を掛けた。
静まり返った部屋。
久しぶりに、家で一人ぼっち。

私はこたつに入った。
足元に何かあたったような気がして、こたつの中に手を伸ばした。

「ダッサー。舞子携帯忘れて行ってるし。ありえないな。」
私は舞子の携帯を開いた。
待ち受け画面には、舞子の好きなタレント画像。
舞子の携帯を見るのは久しぶりだ。

メールが2件届いている。
私はひっそりと、メールを開いた。
『まぢで?ウケるわー♡』
リコちゃんからのメールだ。
さっきまで一緒にメールをしていたのだろう。

『了解。今から行くわ!』
レイからのメールだ。
今日の打ち合わせをしていたのだろう。
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop