アンダーハート・アタシが必死で愛した「アタシ」
山崎の行きつけのバーは、とても暗くて、ほのかに顔が見える、そんな感じのところだった。 ジャズの流れる店内で、ミナコは饒舌に話しはじめていた。 「彼氏とセックスの相性があわないんですよ~っ。私の方が、満足できてないっていうか。いつも彼氏がイって終わりって感じなの。彼とのエッチで、ミナ、イったことがないんですよ~。」 「ミナちゃん、こんなにかわいいのにもったいないね。」 山崎は聴き上手だった。 ミナを女としてたてながら聴いてくれる山崎に、ミナは居心地の良さを感じていた。 酔いさましのはずのグレープフルーツのカクテルを飲みながら、ミナコはさらに饒舌になっていた。 「私ね、ずっとユカにコンプレックスをもってたんですよ。こんなこと誰かに話すの初めてなんだけど。」 「へぇ、意外だな。いつから。」 「大学に入ってから。サークルの中でも、合コンにいっても、男の人は全部ユカの方を向いていて。てゆうか、そうにしか見えなくなっていたのかもしれないけど、、。 それまで、自分にコンプレックスなんて持ってなかったのに、自分の顔が嫌いになって、ユカに嫉妬している自分も嫌いになっちゃって、、すごく辛かった。」 山崎は黙って聞いていた。 四十手前の男にとって、十代の娘の悩みなど、陳腐なものなのかもしれない。 そう思うと恥ずかしくてカッとなった。