甘味処[斬殺]

5:食べる話

結局僅差で鉄人に敗北して、祐樹は残念そうに腰を上げた。
ちょうどその時、祐樹の携帯電話に友人からメールが入った。殺人鬼が携帯電話会社との契約を結べるものかと思うかもしれないが、祐樹の携帯はその友人名義で持たせてもらっている物だ。料金も友人が払ってくれると言っていたが、祐樹はそこまで頼るつもりはなかった。ちゃんと自分で働いて得た金を友人に渡している。祐樹としては、友人の心遣いだけで十分すぎるほど幸福なのだから。
鉄人もそうだが、自分の素性を知ってなお優しく接してくれるその友人は、80年生きてきた祐樹の人生(鬼生?)の中でも最高の友人として記憶されている。

届いたメールは呼び出しだった。呼び出された先は友人の自宅。祐樹はそのメールに、「たまにはなっちゃんが来たらいいのに」と返信して携帯を閉じた。

「てっちゃん、呼び出しもらっちゃった。僕行くからね」

そう鉄人に告げると、「夕飯までに帰ってくるんですよ」とふざけた返答が返ってきた。祐樹は、じゃあ夕飯は奢ってもらおう、と考えて、それは口に出さずに笑顔で鉄人に手を振りながらゲームセンターを後にした。

携帯には「いいから早く来い」と催促のメールが届いていた。
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