甘味処[斬殺]

6:壊れる話

「よう、祐樹。また来たのか」

17時より少し前。祐樹・棗の二人は、先程祐樹が鉄人に負けたゲームセンターに来ていた。あれからだいぶ時間が経ったが、鉄人は「まだ二百円しか使ってない」と自慢した。

「そんなにやってて飽きないのか、鉄?」

「…棗、それは格闘ゲーマーに対しては禁句だ。飽きてないからやっているんだよ。そもそも格ゲーというものは研鑽にこそ意味があるのであって…」

何十人目かの対戦相手とそれなりの熱戦を繰り広げながら、鉄人は熱く語り始めた。2・3分語っていたが、棗が聞いていないと気付き、黙って対戦に没頭した。

しばらくして乱入が途切れ、その隙に鉄人はCPU戦のボスを倒してしまった。席を立って周囲をざっと見回すが、祐樹と棗の姿は無かった。
適当に建物内をうろついて二人を探す。下階のプライズコーナーで、二人並んでUFOキャッチャーに興じていた。いなくなってから数分しか経っていないと思ったが、既に五つのぬいぐるみが救出されている。
程なく鉄人の存在に祐樹が気付いて救出劇は終わった。紙袋二つに分けて、祐樹と鉄人がひとつずつ持ってゲームセンターを出た。

「これはてっちゃんの部屋に居候させておこう」

「またか。いいけどさ」

人の多い通りを歩きながら祐樹が言うと、鉄人は苦笑しながら答えた。祐樹と棗はUFOキャッチャーでぬいぐるみをゲットしては鉄人の部屋に置く。いつか取りに行くと言いながら、鉄人の部屋はいつまでもファンシーなままだ。
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