甘味処[斬殺]
「ほんと?ほんとに?」

何度も問う祐樹に、棗は問われた数だけしっかりと頷いた。祐樹は抱きしめる棗の背中におずおずと手を回し、抱き返しかけたが…その手は、背中に届く前にすとんと下に落ちた。

「あぁ、でもやっぱり駄目なんだよ。なっちゃん、僕は死ななきゃ。ずっとずっと人を殺し続けたら、きっとなっちゃんにもてっちゃんにも嫌われちゃうから。そうだ、サリーに殺してもらおう。みんなに嫌われる前に死ななきゃ。サリー。サリーを探さないと。どこにいるんだろう」

祐樹がよろりと立ち上がる動きをしただけで、強く強く抱きしめていた棗の腕は、いとも簡単にほどけてしまった。屈んだ体勢のままで、棗は未練がましく祐樹の手を握った。

「祐樹。あたしは寂しがりだから、祐樹がいないと寂しくて泣いちゃうぞ」

「なっちゃん…」

祐樹は困ったように棗の顔を見つめ、それからきょろきょろと辺りを見回した。すぐに自分の傍らに、さっきまで抱えていた紙袋を見つけて、その中から一匹の小犬を取り出した。

「なっちゃん、僕、また戻ってくるよ。どうせまた死ねないから。それはわかってるんだけど、今はサリーのところに行きたいんだ。だから…その間、この子が僕の代わり。ね?」

そう言ってぬいぐるみの小犬を棗に抱かせると、祐樹は背中を見せて駆け出した。
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