甘味処[斬殺]
東京都豊島区、池袋に程近いH町。人通りの少ない駅裏の道で昨晩九時過ぎ、男性の他殺死体が見つかった。被害者は30歳前後と見られる男性で、倒れているのを一般人が発見・通報。警察官が駆け付けた時点で既に死亡しており、死因は失血死と見られている。出血箇所はただ一箇所、頸動脈。何らかの刃物で斬りつけられ、一太刀で倒れたらしい。
凶器は見つかっておらず、警察は不審者情報の聞き込みと凶器の捜索を開始。加えて近隣住民に深夜の外出を控えるよう注意を促している。


祐樹は窓から外を眺めた。少し離れた場所に、H町を走る唯一の路線・西武線の線路に沿って池袋に向かう電車が見える。
H町は豊島区の端にあり、池袋まで電車で数分の距離だ。老若男女問わず人の集まる池袋に程近いその町で殺人事件が起こったという知らせは、近隣住民皆に大きな恐怖を与えているという。

近所で誰かがそんな風に話していたのを思い出して、祐樹は困ったように少し笑った。

「…近隣住民皆、か。僕は恐怖していないけど」

ぽつりと呟いて新聞を閉じ、無造作に机の上に放った。そして再び甘いヨーグルトを食べ始めた。


祐樹が男の命を奪ってから、10時間余り後のこと。
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