レイコーン
兵士たちは忠実なしもべへと姿を変える。

「なんだって？」

マールは手を握り締めながら言った。


「駒だと言ったのだよ。最弱のな。まぁ、聞け。私には駒が必要なのだよ。」


「駒？」
　

「そう、駒だ。私の望みをかなえるためにね。」
　

「望み…？」

　
黒フードの男は笑った。
冷たく、冷淡に。


男の目にはマールが映る。
マールは、構えた。
　
「…ふん。」

黒フードの男が気合いを入れて手をかざすと
闘技場で横たわる兵士たちの目の前に黒い渦を巻く球体が現れた。
　
　
「弟子達との約束があるのでね。今回は失礼するよ。」
　
　
ジュワっと言う音をたて、男は消えた。
その瞬間、他の兵士たちも球体の中に入り姿を消す。
　

会場に残されていたのは
マール、ニコス。
そして怪我をして動けない兵士たちだけだった。


「…。」


しばらく茫然と、あたりを見ているだけのマールだった。
　
ニコスは無事だろうか？

ふと、そう思った。

マールはすぐにアリーナへと降りて行った。
その途中、空に浮かぶ水辺がいつの間にか黒くよどんでいるのが目に映っていた。

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