レイコーン
すぐにマールはアリーナわきで倒れていたニコスに駆け寄った。

「ニコス!ニコス!大丈夫かい?」

「・・・ん、あぁ。大丈夫。だけど。」

「だけど?」

ニコスが手にしていた剣が音も言わず崩れ去った。

「こいつはもう使えなくなったな。」

「せっかく、マスターからの贈り物だったのにな。」
 
「うん。でも、無事でよかったよ。」

マールはとりあえずほっとした。
ニコスは折れた剣をぼんやりと見ていた。
 
 
「…どうしたの?どこか痛む?」
 
 
少し考え込んでニコスが答える。
 
  
「…いや、なんでもない。」
 
 
マールがニコスの顔を覗き込もうとすると、
ふと、空に浮かぶ水辺に目が止まった。
 
  
「…あっ!」
 
 
闘技場の映像を映していた水辺が
真っ黒に染まっている。
 
 
「この国の水が…。」
 
 
ニコスは空を見上げた。
 
  
「行こう。きっとあの水辺に奴らの足取りをつかめるヒントがあるはずだ。」
 

「・・・ねぇ、ニコス?」
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