レイコーン
――リンリンリン――
まるで、小さな金属を擦るような高い音が
マールの耳に入り目が覚めた。
「--ん?ここは?どこかの洞窟?」
気がつくと、マールはどこか暗い場所で眠っていた。
彼の胸の上には小さな妖精リリー。
「…リリー?」
疲れのだろう。ぐっすりと眠っているようで
妖精の羽が鈴のような音をつくりだしていた。
あたりはうす暗らかったが
小さく優しい光が
天井から延び、彼の視界に届いた。
「…寒い」
洞窟は冷え込んでいて
どこからか風が吹いているようだった。
マールは自分の手を温めながらその先を見つめた。
目を向けた先には
青白い砂に染まった砂漠と地平線。
すぐに夜なんだと理解できた。
洞窟を出ると
昼の灼熱の砂漠がウソのように
あたりは静まり返っている。
月明かりに照らされた
細かな砂の一粒一粒が柔らかな光を放ち
風に運ばれてゆく
まるでそれは
冷たい手をした老婆が赤子に触れるかのような
優しさであった。
キラキラ光る
チリにも似た砂は
空へと舞い上がり
次第にうっすらと形をつくってゆく。
マールはその形がなんなのか知っていた。
「…鳥だ。」