レイコーン
すると、
クスクスクス。
クスクスクス。
やっぱり何か聞こえる。
幻聴ではない。何かの声はマールの心揺さぶった。
「あの子歩いてるよ?大丈夫なの?」
「さぁ、彼が選んで連れてきたのだから大丈夫じゃない?」
クスクスクス。
そんな風に聞こえる。
マールは手に持った傘を握り締めながら
耳を澄ませた。
クスクスクス。
気のせいなんかじゃない。被害妄想でもない。
誰かがマールのことを話している。
この誰もいない路地で。
「誰?そこに誰かいるの?」
かなり大きな声で遠くの壁に向かって問いかけるマール。
だが、返事はない。