レイコーン
道の数メートル先はもう闇に染まっていて街頭もろくについていない。
急がないと黒猫を見失いそうだ。
「待ってよ」
マールは彼を追いかけた。
左手の方には相変わらず
永遠と円周率が書かれた看板が続いているのが目に映った。
それ以外にはめぼしいものは何もない。
強いて言うなら、壁は湿気ったレンガだ。
この道はどこまで続くのだろうか?そんな疑問は解決するはずもなく
マールはただモクモクと先に進む彼の足取りを追った。
ピチャッ、ピチャッ・・・
湿った壁がマールの手の甲に触れマールははじめて気がついた。
道幅がさらに狭くなっている。
まるで道が狭いトンネルにでもなったかのように閉塞感が漂う。
だが、それとは相反して
黒猫の進む道からさわやかで涼しげな風が吹いている。
「さっき、こんな道通らなかったのに・・・?」
さっき歩いていた道は
ちらほらと街頭に、バス停などあったはずだ。
目印も決めていた。
同じ道を歩いていたはずなのにバス停も、街頭も建物の入り口や窓さえない。