レイコーン
話が終わると
すぐどこかへ行ってしまうニコスに
話の感想でも何でも、とにかく何かを言おうとするが、
口が開くものの声が出ない。
「えぇっと・・・」
なんて風にマールの頭の中で話す言葉がまとまる前に彼はいなくなる。
だから、マールはいつも
去っていく彼の姿を見て、何も言えないことが心寂しいと感じていた。
「少し行ってみたいな・・・」
マールはそうつぶやきながら
さっきまでニコスがいた場所をぼんやり眺めた。
マールは自分に友達がいないことを知っている。
できない理由は簡単だ。
話題がないから。
毎日一人でいる時間は
彼にどこかで自分が暮らしている
世界はここではないんじゃないかと
思わせるには十分な時間だった。
「切符って何だろう。」
もしかしたら噂の場所へ行けば
みんなおもしろがって
僕の話を聞いてくれるようになるのかもしれない。
マールはそう考えるようになっていた。