レイコーン
 

湿ったレンガの壁が続くだけの道なのに落ち着かない。

 

ひとりだったなら音を上げていただろう。
黒猫の力強い足取りに勇気をもらっているのだろうか?

不思議に感じながらも
黒猫の歩む道を不信には思わなかった。

 

なぜかここは、
マール自身が歩かなければいけないような気がして
心に確かな暖さを感じていた。

 

マールの足が前を歩いていた黒猫に追いつくと、
ふと、彼は急に足を止めてしまった。

 

「ミャ~」

 

この通路は
真っ暗で何も見えない。

 

後ろにいるマールに語りかけるように
黄色い目で彼はマールを見つめ
何か言いたそうだ。

 

「何かあるの?」

 

よく見ると、
左手の方にあった円周率がかかれた看板が
とぐろを巻くように目の前の壁で収束している。

 

マールは壁を触ってみた。
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